Top age groupers 世界の強豪トライアスリート

最近、トップレベルのアイアンマン・エイジグルーパーについて調べています。その中で、トライアスロンに取り組む姿勢や考え方にとても共感した選手がいたので紹介します。

2012年のコナでM35-39カテゴリーで2位を獲得した、フィンランド出身のSami Inkinenという方です。彼は、不動産関連のインターネットサービスのTruliaの共同創業者であり、その会社を上場させた後に、糖尿病患者向けの改善サービスを提供する会社であるVitra Healthを設立し、現在、CEOとして活躍しています。そして、その間、夫婦でサンフランシスコからハワイのホノルルまでカヌーで航海し、45日間という世界最短記録を立てています。(※カヌーですよ、カヌー)

彼のトレーニングに対する考え方にとても共感するところが多かったのでTriathlete.comの記事を紹介します。

元記事:The Natural: Entrepreneur Sami Inkinen

  • 2012年のアイアンマン世界選手権コナでエイジカテゴリー2

Sami Inkinenは、Truliaの共同創業者として忙しい日々を送りながら、週12時間の練習で、2012年のアイアンマン世界選手権コナを8時間58分で完走し、エイジカテゴリー2位を獲得。これはプロ選手23人よりも速い記録。また、同年のアイアンマン70.3世界選手権でカテゴリーチャンピオンを獲得している。練習方法の特徴は、高強度練習の多さ、細部やデータ分析に対するマニアックなくらいの注目、リカバリーに対する熱烈なこだわりの3点。

  • 高強度練習と回復を重視

2010年までの彼は、世界選手権出場レベルであったもののトップレベルには到達していなかったが、2011年から急にトップレベルに成長。その際、大きく変わったのは回復に対する考え方で、「毎回の練習で改善が見られないなら、それはトレーニングをしていないからではなく休んでいないからだ」と考えるようになった。

これにはPurplepatchというコーチングサービスの考え方も影響している。Purplepatchの創業者のMatt Dixonの提唱するRestweiseという考え方に基づき、毎日、心拍数、体重、睡眠、酸素飽和度、水分量、食欲、筋肉の痛み、気分、生活満足度、前日のパフォーマンスを記録した。それをもとに、高強度練習するのに十分回復できていないと判断すれば、回復のための軽負荷練習をしていた。(※逆にそれくらい高強度練習を重視し集中して取り組んでいるということだと思います。)

Matt Dixonによると、ストレスには身体的ストレスと非身体的ストレスの2種類がある。プロ選手は、身体的ストレスの増加に上手く順応しながらトレーニング負荷を最大限高める必要があり、その限界を決めるのは身体的なパフォーマンス。一方で、アマチュア選手は、仕事や家庭生活などの非身体的ストレスと、トレーニングによる身体的ストレスを統合しながら、トレーニング負荷を最大化する必要がある。(※このあたりは昨年出版された著書のFast track triathleteに詳しい。読み始めたので面白ければブログでも紹介します。)

現在、彼は、日々の記録を日記のように活用していて、どう感じたか、睡眠時間、心拍数、体重、カフェイン摂取量、カロリー摂取量、トレーニング内容、その日あった3つの感謝を記録している。

回復を重視する背景には、全ての練習は目的を持っているべきという信念があり、彼は、身体がその目的を果たせる状態にない限り練習すべきでないと考えている。

以前は軽い負荷で長時間練習していたが、今はバイクであれば屋内で4回か5回の8分高強度の練習を実施している。高強度の8分を4つに分けて、2分ハーフアイアンマンペース、2分ハーフアイアンマン以上のペース、2分ハーフペース、2分ハーフ以上のペース、5分クールダウンというメニュー。

なお、トレーニングでは疲弊し切るまで練習しない。それは回復に時間がかかりすぎるからであり、24間以内に高強度練習ができるようにしたいため。

  • 暑さ対策

回復の他に、コナでトップレベルの成績をあげることができた要因は、暑さ対策。彼は、体重80キロを超す筋肉質の身体であり、大きな体は小さな体の選手に比べてより多くの熱を生み出しやすい。そのためペースのコントロールを最も重視している。マラソンでは、暑い区間では力を緩めて走り、比較的涼しい区間で力を入れる。またレース全体でも、比較的涼しいバイク区間でランよりも力を入れたり、ラン区間では日当たりの良い暑い時は歩くなどしている。

  • 経歴や仕事での様子

彼は、ロシアとの国境近くにあるフィンランドの小さな村の出身。数学が得意でヘルシンキ大学で修士号を取得し、その後、ソフトウェアの会社を設立。アメリカのスタンフォード大学のMBAコースに進学し、Truliaを設立した。5ヶ国語を話す。

Truliaの社長をしているときは、朝5時半に起きて1時間程度仕事してからトレーニングをして、9時頃に出勤し6時か7時にオフィスを出る。日曜日は夕方5時から10時まで仕事。

周囲の同僚の彼に対する評判は、「根っからの科学者」、「データ好き」であり、「もし何かを記録できるなら、それは改善可能である」という考えで働いている人、というもの。

偉そうに振る舞うことがなく、オフィスでも社長室を作らずに他のスタッフと一緒に机を並べている。トライアスロンのレース結果についても自慢することなく、同僚は、もし言われなければ彼が世界トップレベルのアマチュア選出ということさえ知らない。彼は「オフィスで最も賢い人のように振る舞うことは簡単であるが、それはマネジャーとしてすべきでないこと」という考え。

  • 結果でははく過程を楽しむ

彼は、改善を続け、物事を理解する過程(=旅)が大好き。レースを終えた後は、学び、改善できること、変えてみることの3つをメモする。それ自体が彼にとって楽しみ。ちなみに、彼は大人になってから、最初はほとんど泳げないレベルから水泳をはじめて、コナのスイムコースを1時間2分で泳いでいる。

What I really love is the journey—the continued process of improving and trying to figure things out,” Inkinen said.

  • 1週間の練習スケジュールの例

Monday: Rest (or 30-min easy swim*)
Tuesday: Bike intervals on trainer (60-90 min)
Wednesday: Run intervals on trails (60-70 min)
Thursday: Bike intervals on trainer (60-90 min)
Friday: Rest day: swim (20-50 min); easy run if time
Saturday: Bike long (4 to 5 hours with no intervals; social time with wife, friends)**
Sunday: Run long (80 to 90 min with intervals); swim if time

以前、彼は他のアイアンマン出場者と同じように2時間半から3時間のランを行っていたが、現在では2時間のランは年に1回であり、80分を超えるランもほとんど行わない。それは、長時間のランは回復に非常に時間がかかるから。これについては、彼のコーチのMatt Dixonも同じ意見で、アイアンマンのランでは心肺機能と筋持久力が求められるが、後者は高頻度の練習で鍛えられる。一方で長時間ランは非常にリスキーとのこと。

※彼はIncurable data geek(治療不能なデータマニア)というブログでも情報発信しています。こちらも非常に面白いです。

http://www.samiinkinen.com/

起業家としてリーダーシップについても情報発信しています。Youtubeでもスピーチの映像を見れますが、Get uncomfortable(苦痛を感じろ、そういう状態に自分を追い込め)というのが一貫したメッセージです。

https://www.inc.com/author/sami-inkinen

1 Comment

  1. […] 。著者のMatt Dixonのコーチングを受けた選手で、この本でも紹介されている強豪エイジグルーパーのSami Inkinen選手は、毎朝、起床時の気分等を数値化して記録していたとの記事があったの […]

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