※アワードパーティーの会場にて
6:15
起床
7:20
毎年恒例のアンダーパンツ・ラン参加のためにキングカメハメハホテルへ。会場には既に大勢のパンツ姿のアスリートが。チャリティーイベントなので25ドル払って参加。イベントロゴの入ったパンツをもらう。日本人選手は毎年フンドシで参加しているので、私も自らアイアンマンロゴをパッチワークしたフンドシで参加。全員で簡単な準備体操と誓いを立てて、いざ出発。
まずは全員で準備体操
アリイドライブをアンダーパンツ姿のアスリートが埋め尽くす
ふんどし姿の日本人は人気で、フランス人の集団とランニング中に記念撮影
当日の詳しい様子はこちら(https://www.triathlete.com/2018/10/ironman/2018-kona-underpants-run_335889)
8:45
宿に帰って仮眠。時間があったのでTriathlonworld.comで選手のインタビューをいくつか聞く。その中で特に印象に残ったのは昨年度のコナで優勝したディフェンディング・チャンピオンのPatrick Lange選手。プレッシャーを感じているかという問いに、「僕は自分を追い込まないタイプの人間。落ち着いて慎ましい生活を送るのが好きなんだ。もちろん最高のパフォーマンスを出したいけど、勝つ必要があるとは思わないね。アイアンマンレースはまだ他にもあるからね」とのこと。また、「重要なことは、自分の最良の精神状態を自分自身で理解しておくこと。僕は、自分を高めるために敵を必要とはしないんだ。(昨年2位だった)Sanders選手が僕の写真を貼ってトレッドミルで走っているけど、そういうことはしないよ。もちろん、やり方は人それぞれで否定はしないけど。」とも。常に自分に焦点を当てる、ということか。実践するのは難しいけど、参考になるなあ。
https://triathlonworld.com/personality/patrick-lange-ready-another-big-day-kona-146471
14:30
カイルア桟橋横のOnの特設ブースでTim Don(https://www.timdon.com/)とJavier Gomez(http://www.javiergomeznoya.com/)のサイン会に参加。予定時間ちょうどに行ったら既に長蛇の列。30分以上待ってようやく自分の番。
まず初めにTimから。昨年の世界選手権では優勝候補の一人でありながら直前のハワイ島での練習中に車に引かれて首を骨折する大怪我をした。今年のボストンマラソンでは川内優輝選手が優勝して日本ではその報道ばかりだったけど、私にとってはリハビリ目的で参加したTimのカムバックが何よりも嬉しかったし勇気付けられたと伝えた。Timは川内選手について知っていたらしく、そういえばパンダのコスチュームを着て走る人だよね、と言っていた。川内選手は海外でも有名らしい。
また、自分も2年前にバイク練習中に車に引かれて大怪我をしたことと、その経験からTimが事故後に懸命にリハビリする姿にとても共感したこと。そして、Timが日本のような遠く離れた地でもアスリートを元気付けていることへの感謝を伝えた。
続いてGomez。私が5年前からトライアスロンを始めて、その翌年の横浜トライアスロンでのGomezの走りを沿道で見て衝撃を受けたことを、彼が快走する当時の写真を見せながら伝えた。笑いながら、あの大会の事はよく覚えているよ、とのこと。また、私が今回初めてのコナ出場であることを伝えると、同じくコナ初出場となるGomez選手から、お互いルーキーとして頑張ろう、とも。
二人とも素敵な笑顔で対応してくれて、今まで以上にファンになってしまった。アイアンマンのキャップに二人にサインをしてもらい大満足。
アリイドライブの特設ブースは長蛇の列
明るく快活に話すTim
ルーキー同士、仲良く肩を組む
TimとGomezのサインをもらい大満足
15:30
カイルア桟橋で軽く150m往復を2回だけ泳ぐ。前回の練習の動画でやや気になった右手の入水を丁寧にすることに気をつけながら異なるピッチを試す。レース当日は、落ち着いてゆっくり泳ぐのが良いという方針を最終確認できた。
軽く泳いでもレース目標ペースと同じくらいで、ホッと一安心している様子
ゴール前では特設ステージの設置が進んでいた
17:20
18:00開始のウェルカムパーティは早く行かないと良い席がとれない聞いていたので開場40分前に到着。それでも既に多数の先客が。コナで知り合いになった同じ歳の日本人アスリートと彼の奥様と一緒の席で食事。
彼はアイアンマン・マレーシアに熱い思いを持っていて、5年ほど前から参加しているそうで、来月もマレーシアで70.3マイル(半分の距離)の部門に参加する予定。2年前の同大会では、その前年のレース結果から考えると十分にコナ出場権が獲得できるタイムでゴールして喜んでいたら、参加者のレベルが高まっていて獲得ならず、宿に帰ってから大きなショックを受けたそうだ。ちなみに、その年の同年代カテゴリーの上位3人は、10月のコナを終えた後、母国に帰らずそのままタイでのトレーニングキャンプを経てマレーシアのレースに参加していたとのこと。そういうレベルでアイアンマンに力を注いでるアマチュア選手がいるのかと驚いた。その他にも楽しく、モチベーションの高まる話を色々教えていただいた。同じ歳なので、これからずっと同じカテゴリーで切磋琢磨できる。素晴らしい仲間ができた。
入場待ちの長蛇の列
18:00
ウェルカムパーティ開始。まずは歓迎のフラで始まる。生で見るフラは今回が初めて。
最初は、ハワイの伝統的なカヌーで使うオールを持った8人の男女によるフラ。歌と掛け声に合わせながらシンクロして踊る。素早く波に対処しながら実際にカヌーで海を進んでいるような感じ。その後は、女性だけによるフラ。ゆっくりと、休みなく連続する動作に見とれてしまう。水の流れのような手の動きを見ていると気分も落ち着いてくる。
恰幅のよいおじちゃんが、歓迎のフラの説明をし、自分でもハワイ伝統の歌と思われるものを披露してくれるが、話は長め。そう言えば宮古島でも伊是名でも市長や村長の挨拶が長かった。これは南国共通のことなのか。
その後、司会やアイアンマン主催者の挨拶などがあり、過去6度世界チャンピオンに輝いたマーク・アレンが40年のアイアンマンの歴史を振り返る。彼曰く、40年の歴史は夢や可能性を追求した全ての人の挑戦のもとに成り立っている。今ここに集まっているアスリートもレース当日に自分の夢や可能性を追求し、次の40年の人たちの土台を作って欲しい、と言ってた(と思う)。その情熱的な語りと、40年の歴史を振り返る映像を見ていて、どこかで同じような光景を見た気がした。後で思い出したが、それはジム・キャリー主演の『イエスマン』という映画のワンシーン。すべてのことにイエスと答えるという、異常なほどのポジティブ思考のセミナーか宗教団体の会合で、教祖が会場を盛り上げるシーンに似ていると感じた。よく考えたら、私も、日々、苦行に近いトレーニングと生活を続けて、世界選手権の出場資格を取るのに必死になって、取れたらその場で10万円近くを即支払う。そして、大会に来たらオフィシャルグッズに万単位のお金を寄進する、じゃなくて、購入する。その自分の姿は「エンデュランス・スポーツ教の信者」と呼ぶにふさわしいかも。
その後は、アイアンマンの殿堂入り人の紹介や、最高齢、最若年の参加者の紹介、そして参加回数別に参加者が起立してお互いに拍手を送ったり。最高齢出場者として85歳の稲田さんがステージに立っていた。ちなみに最多出場回数の人は今回が34回目とのこと。正に、アイアンマンに捧げた人生だ。
素晴らしいと思ったのは、大会のボランティア・ディレクターを33年務めた人も殿堂入りで表彰されていたこと。過去に活躍した選手だけではなく、大会に貢献した人を多方面から表彰することで、この大会が選手だけのものではなく、地域や運営者にとっても誇りとやりがいを持てるようにしていると感じた。今回も5000名を超える地元のボランティアが協力しているそうで、彼・彼女達の協力がなければ私達もレースを楽しむことができない。
このようにアイアンマンの運営は、好きか嫌いかは置いといて、大会運営の点で学べる事が多い。レース形式を共通化して世界中で大会を運営する仕組み。コナの世界選手権出場権獲得や、年間のレースポイントによるステータス獲得を世界中の選手が競い合える仕組み。70.3マイルという半分の距離の形式を作って開催と参加の敷居を下げて普及を促す仕組み。オフィシャルグッズによる収益獲得。それらのハード面の工夫に加えて、”Anything is possible”という価値観を明文化して、表彰活動や共感を生む物語を映像にして、それを浸透させるソフト面の工夫などなど。
私もたかだか過去に3回レースに出ただけで、運営側の状況は一切知らないので実態は違うかもしれないが、毎年、世界中で数十のレースを、現地の大会事務局とボランティア中心で大きな問題なく運営できるというのは、相当なマネジメント上の工夫と優秀な人材がいないと実現できないと思う。しかも、一つ一つの大会は、1000人以上の選手とその家族が1週間前後の期間滞在し、レース時間だけでも15時間以上かかる巨大なプロジェクト。そういうマネジメントの観点からアイアンマンレースを見てみるのも面白そうだ。
という、自分のレースとは全く関係ないことを考えながら宿に帰って、この日は終了。
初めてみるフラ